2025年6月13日に公布された「改正資金決済法」の施行が、いよいよ目前に迫っています。施行日は公布から1年以内、つまり遅くとも2026年6月12日までに施行されることが法律で定められており、海外FXの入出金環境に大きな影響が及ぶ見通しです。
特に問題となるのが「クロスボーダー収納代行」への規制適用で、これまで日本人トレーダーの主要ルートだった国内銀行送金が事実上使えなくなる可能性が指摘されています。bitwalletやSTICPAYといったオンラインウォレットの円入出金にも影響が及ぶ見込みで、海外FXユーザーは入出金手段の見直しを迫られる状況です。
この記事では、改正資金決済法の概要から、海外FXユーザーが受ける具体的な影響、施行までに準備しておくべき対策までを整理して解説します。
改正資金決済法とは?2026年6月までに施行される金融規制
改正資金決済法は、2025年6月に成立・公布された金融規制の改正法で、暗号資産や資金移動業に関するルールを大幅に見直す内容となっています。海外FXユーザーが影響を受けるのは、主に資金移動業関連の改正部分です。
改正資金決済法の正式名称と成立の経緯
正式名称は「資金決済に関する法律の一部を改正する法律」(令和7年法律第66号)です。2025年6月6日に参議院本会議で可決・成立し、同年6月13日に公布されました。
改正の背景には、金融のデジタル化や国境を越えた資金移動の増加があります。金融庁は2024年9月から「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」で計7回の審議を重ね、利用者保護とイノベーション促進の両立を目指した制度設計を進めてきました。
改正の3つの柱
今回の改正は、大きく分けて以下の3つの柱で構成されています。
1つ目は、クロスボーダー収納代行(国境をまたぐ収納代行)への為替取引規制の適用です。海外オンラインカジノや無登録金融商品取引業者などへの送金に使われている事案を踏まえ、利用者保護とマネーロンダリング対策の観点から、資金移動業の登録を義務付ける内容となっています。
2つ目は、暗号資産・ステーブルコイン関連の規制整備です。暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者への国内保有命令の創設、新たな仲介業の創設、信託型ステーブルコインの裏付け資産運用ルールの緩和などが含まれています。
3つ目は、資金移動業者の破綻時における利用者資金の返還方法の追加で、従来の供託に加えて履行保証人による直接返還が可能になりました。
このうち、海外FXユーザーが直接的な影響を受けるのは、1つ目の「クロスボーダー収納代行への規制適用」です。
施行日と現在の状況
施行日は附則第1条で「公布の日(2025年6月13日)から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。つまり、遅くとも2026年6月12日までには施行されることが法律で確定しています。
海外FXユーザーに直撃する3つの影響
改正資金決済法の施行によって、海外FXユーザーの入出金環境には大きな変化が予想されています。法改正の直接的な対象は資金移動業者や収納代行業者ですが、その影響は最終的にユーザー側へ波及する構図です。ここでは、海外FXユーザーが直面する3つの主要リスクを整理します。
①国内銀行送金ルートが事実上停止する可能性
これまで日本人トレーダーの主要な入金手段だった「国内銀行送金」は、海外FXブローカーの口座へ直接振り込んでいるわけではなく、日本国内の収納代行業者を経由する仕組みになっています。
この収納代行業者がクロスボーダー収納代行に該当することから、改正法の施行後は資金移動業の登録が必要となります。さらに、金融庁が公表した内閣府令案では、無登録の金融商品取引業者向けの収納代行は資金移動業の登録自体が認められない方針が示されました。
金融庁から「無登録業者」として警告を受けている海外FXブローカーを利用している場合、現行の国内銀行送金ルートは使えなくなる可能性が高い状況です。
②bitwallet・STICPAY等オンラインウォレットへの波及
bitwalletやSTICPAYといったオンラインウォレットは、海外FXユーザーが日本円で入出金するためのバイパスとして広く利用されてきました。これらのサービス自体は海外法人が運営しているため、改正資金決済法が直接適用されるわけではありません。
しかし、ウォレット運営会社がユーザーから日本円を受け取る際の国内入金窓口は、実質的にクロスボーダー収納代行に該当する形で運用されていることが多く、この入金経路が規制対象となる可能性が指摘されています。
つまり、bitwallet等のウォレットが「今後も使えるかどうか」は、その背後で日本円入出金を担う収納代行業者がどう対応するかに依存しており、現時点で安泰とは言い切れない状況です。
③海外FX利用者の個人銀行口座が凍結されるリスク
改正法の成立を背景に、銀行側のマネーロンダリング監視はすでに強化されつつあります。海外FX関連の入出金が銀行から「怪しい資金移動」と判断された場合、ユーザー本人の銀行口座が一時的に凍結されるケースが報告されています。
一部の銀行では海外FX業者やFX/CFDプラットフォームへの送金を制限対象として明示しているケースもあり、銀行ごとに対応が分かれている状況です。海外FXへの高頻度・高額送金が確認された口座について、確認書類の提出を求めたり利用制限をかけたりする事例も増えています。
施行が近づくにつれ監視は一層厳しくなることが見込まれており、これまで問題なく送金できていたユーザーであっても、突然口座を制限されるリスクが現実味を帯びてきました。
クロスボーダー収納代行への規制とは
改正資金決済法のうち、海外FXユーザーに直接的な影響を与えるのは「クロスボーダー収納代行」への為替取引規制です。これまでグレーゾーンとされてきた事業類型が、施行後は明確に規制対象となります。
収納代行とクロスボーダー収納代行の違い
収納代行とは、資金の受取人に代わって支払人から資金を受領し、受け取った資金を引き渡す行為のことを指します。身近な例では、コンビニでの公共料金支払いや、運送業者による代金引換などが該当します。
このうち、資金の受領と引き渡しが日本国内外をまたぐ場合、つまり国内から国外、または国外から国内へと資金が移動するケースが「クロスボーダー収納代行」と呼ばれます。海外FXの入金で利用されている国内銀行送金ルートは、まさにこのクロスボーダー収納代行の典型例です。
なぜ規制対象になったのか
改正前の資金決済法では、クロスボーダー収納代行は明示的に規制対象として議論されておらず、適切に運営すれば資金移動業の登録なしに事業を行うことが可能とされてきました。いわゆるグレーゾーンの存在です。
しかし、海外オンラインカジノや海外出資金詐欺、無登録金融商品取引業者などへの送金にクロスボーダー収納代行が利用されている事例が増加し、利用者保護やマネーロンダリング対策の観点から問題視されるようになりました。
2025年1月22日付けの金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ報告」では、クロスボーダー送金と同機能を果たしているクロスボーダー収納代行について、リスクに比例した為替取引規制を適用すべきとの方針が示され、これが今回の改正に結実しています。
規制対象と適用除外の境界
改正資金決済法第2条の2第2号により、クロスボーダー収納代行は原則として為替取引に該当することが明記されました。為替取引を業として営むには資金移動業の登録が必要となるため、施行後はクロスボーダー収納代行業者は、登録申請を行うかサービスを終了するかの選択を迫られます。
ただし、すべてのクロスボーダー収納代行が規制対象となるわけではありません。内閣府令案では、以下のケースが規制対象外(適用除外)として整理される見込みです。
- プラットフォーマー等が取引成立に関与する場合
- エスクローサービス(顧客のために一時的に資金を預かり、商品受領後に送金する仕組み)
- 商品・サービスの取引成立に関与する者が行うクロスボーダー収納代行
一方、海外FXのように「金銭債権の発生原因の成立に関与しない者が行うクロスボーダー収納代行」は、原則として規制対象となります。さらに、無登録金融商品取引業者向けの収納代行については、登録申請を行っても認められない方針が示されているため、海外FXブローカー向けの収納代行業者の多くは事実上、サービス終了を余儀なくされる見通しです。
国内銀行送金・オンラインウォレットへの具体的影響
改正資金決済法の施行によって最も大きな影響を受けるのが、海外FXユーザーが日常的に利用してきた国内銀行送金とオンラインウォレットです。それぞれの仕組みがクロスボーダー収納代行とどう関係しているのか、施行後の見通しを含めて整理します。
国内銀行送金への影響
国内銀行送金は、ユーザーから海外FXブローカーへ直接送金するのではなく、収納代行業者の国内銀行口座を経由する仕組みです。改正資金決済法の施行後、この収納代行業者は資金移動業の登録が必要となります。
経過措置として、施行日から6か月間は無登録での営業継続が認められ、その期間内に登録申請を行えば最長2年間の延長が可能です。しかし、内閣府令案では「無登録金融商品取引業者向けの収納代行は登録が認められない」方針が示されているため、金融庁から無登録警告を受けている海外FXブローカーを取り扱う収納代行業者は、登録申請を行っても認可は下りない見通しです。
実際、施行を待たずに先取り影響がすでに広がっています。一部の海外FXブローカーでは国内銀行送金がメンテナンス中となり、利用できなくなる状況が発生しています。SNS上では海外FX関連の入出金を理由とした個人の銀行口座制限や凍結の報告も増えており、ユーザー側のリスクも段階的に高まっています。
つまり、国内銀行送金は「施行までの猶予期間の中で、徐々に使えるルートが減っていく」プロセスがすでに始まっており、施行を機に一気に消えるのではなく、すでに崩れ始めているというのが現状です。
bitwallet・STICPAYなどオンラインウォレットへの影響
bitwalletやSTICPAYは海外法人が運営するオンラインウォレットで、改正資金決済法そのものが直接適用されるわけではありません。サービス自体が「違法になる」という性質ではない点を、まず整理しておく必要があります。
ただし、これらのウォレットでユーザーが日本円を入出金する際の窓口は、国内の収納代行業者が担っているケースが大半です。つまり、ウォレット本体ではなく、その背後で円入出金を支える収納代行業者が改正法の規制対象となるため、円ベースでの利用に制限がかかる可能性があります。
執筆時点では、bitwalletの利用が直接の理由で口座凍結されたという確定情報は確認されていません。しかし、施行が近づくにつれて収納代行業者の事業継続判断が見直される局面に入っており、現状の利便性が今後も維持される保証はない状況です。
特に注意が必要なのは、入金より出金で問題が顕在化しやすい点です。入金は失敗すれば再試行できますが、出金経路が突然断たれた場合、ブローカー側に資金が滞留する可能性が出てきます。利用中のウォレットの稼働状況と、ブローカー側で利用可能な代替ルートを並行してチェックしておくことが重要です。
海外FX入出金で今すべき対策|仮想通貨送金への移行
国内銀行送金や収納代行経由の入出金が不安定化する中で、最も現実的な代替手段として浮上しているのが仮想通貨送金です。海外銀行送金(SWIFT)も法律上は規制対象外ですが、実用性の観点では仮想通貨に大きく劣ります。
仮想通貨送金が最有力の代替手段になる理由
仮想通貨送金は、収納代行業者や銀行を介さず、ブロックチェーンネットワーク経由でブローカーに直接送金する仕組みです。改正資金決済法はクロスボーダー収納代行業者を規制する法律であり、ブロックチェーン上の個人間送金は規制の射程に入りません。
実際の送金フローは、入金時に国内仮想通貨取引所(bitFlyer、Coincheck、GMOコインなど)で日本円を仮想通貨に交換し、自己ウォレットまたは海外取引所を経由してUSDTなどステーブルコインに変換した後、海外FX業者の入金アドレスへ送金します。出金時はこの逆のフローで、海外FX業者から自己ウォレットへ仮想通貨を受け取り、国内取引所で日本円に換金します。
USDT(テザー)など米ドル連動のステーブルコインを使えば、価格変動リスクを最小限に抑えながら送金が可能です。送金ネットワークはTRC20(Tron)が手数料・速度の観点で広く使われていますが、対応ネットワークはブローカーごとに異なるため、利用前に確認が必要です。
メリットは大きく3つあります。収納代行業者や銀行を介さず、ブロックチェーン経由でブローカーへ直接送金できるため、改正法施行後も影響を受けにくい構造である点。着金スピードが数分から数十分と速く、手数料も数百円程度に収まる点。そして、銀行口座が監視・凍結されるリスクから切り離せる点です。
海外銀行送金(SWIFT)は代替手段になり得るか
海外銀行送金は、ユーザーの銀行口座から海外FX業者の海外口座にSWIFTネットワーク経由で直接送金する方法です。収納代行業者を介さないため、改正資金決済法の直接的な規制対象にはなりません。
ただし、実用性の観点では課題があります。送金手数料に加えて中継銀行手数料(コルレスチャージ)が加算され、少額送金ではトータルで1万円超のコストがかかることも珍しくありません。着金まで2〜5営業日を要する点も、トレード資金の送金手段としては不便です。
加えて、銀行側の警戒も強まっています。一部銀行は公式サイトで海外FXへの送金を禁止する旨を明記しており、その他の銀行でも海外FX関連送金を制限する動きが広がっています。海外FX業者側でも、入金手段としてSWIFT送金に対応していないケースが多く、対応していても出金専用というのが一般的です。
結論として、海外銀行送金は改正法の直接対象外ではあるものの、実用的な代替手段とは言いがたいのが現状です。
対策の進め方|複数ルートの確保とブローカー選び
施行後の入出金環境に備えるうえで重要なのは、ひとつの方法に依存せず、複数の代替ルートを並行して確保しておくことです。
具体的な準備としては、まず仮想通貨入出金に対応している海外FXブローカーを利用していることを確認します。XMやExness、HFMなど主要なブローカーは仮想通貨入出金に対応していますが、対応する通貨やネットワークは業者ごとに異なるため、事前にチェックが必要です。
次に、国内仮想通貨取引所のアカウントを開設し、本人確認まで完了させておきます。本人確認には数日かかるケースもあるため、施行直前に慌てて準備するのは避けたいところです。あわせて、自己ウォレットを用意しておけば、取引所のメンテナンスやトラブル時にも送金経路を確保できます。
施行までの猶予期間を活用して、実際に少額で仮想通貨送金を試してみるのがおすすめです。フローに慣れておくことで、施行後に主力ルートが切り替わってもスムーズに対応できます。
なお、国内取引所から海外FX口座に仮想通貨を直接送金することは、トラベルルールの影響で難しいケースが多く、海外取引所や自己ウォレットを経由する必要があります。具体的な送金フローやおすすめの仮想通貨については以下の記事で詳しく解説しています。

ご参考までに、私は台湾に住んでいますが、現状ではメインの入出金手段として仮想通貨送金を使っています。台湾の仮想通貨取引所でUSDTを売買し、海外FX口座への入出金を行っていますが、慣れてしまえば銀行送金より手間が増えるわけでもなく、日常的なルートとして十分機能します。日本居住者の場合も、国内の仮想通貨取引所との組み合わせで同等の運用が可能だと思います。
よくある質問
改正資金決済法と海外FXに関して、FAQをまとめました。





